大学受験資格におけるアジア系民族学校差別と排除の撤回を求める声明

 文部科学省は3月6日、「大学入学に関し高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者の指定」(昭 和23年文部省告示第47号)を一部改正して、これまで大学受検資格を認めていなかった国内の外国人学校のうち、米英の学校評価機関が認定した16校のインターナショナルスクールに受験資格を認める方針を明らかにしました。この方針どおりに決定・実施されるならば、朝鮮学校、韓国学園、中華学校などのアジア系の民族学校には、これまでどおり受験資格を認めないことになります。

 この決定により、受験資格から排除される外国人学校の大半は朝鮮学校です。周知のとおり、朝鮮はかつて日本による植民地支配を受け、その中で、民族の言語・歴史などの教育は抑圧されました。日本の支配からの解放後、在日朝鮮人は、民族の言語・歴史などを教育するために、全国各地で民族教育を実施しましたが、占領軍と日本政府は、学校教育法による認可を受けていない学校の閉鎖を指示しました。それに対する抗議行動が、大阪・神戸などでおこりましたが、警察によって弾圧され、多くの民族学校が閉鎖されました。その後、サンフランシスコ講和条約が発効すると、政府は、日本国籍を喪失した在日朝鮮人は就学の義務はないとして、在日朝鮮人の生徒が無償で教育を受ける権利を否定したのです。しかし、その後も在日朝鮮人の民族学校再建への熱意は消えず、朝鮮学校が相次いで設立され、都道府県から各種学校としての認可を受けるようにもなりました。朝鮮学校だけでなく、韓国学園、中華学校などの民族学校もまた、それぞれ固有の歴史的背景を有し、長年の教育・進学の実績をもっています。そして現在では日本全国の約半数の公立・私立大学が、学校教育法施行規則第69条5号の規定を、大学が独自に受験資格を認定できるものと解釈することによって、これらアジア系民族学校の卒業生への受験資格を認めています。

 文部科学省は、この度の決定に際して、上記機関の評価を採用する理由を、「当該認定団体の評価活動が国際的に定着していると認められる」からであると説明しています。しかし、では何故、朝鮮学校をはじめとするアジア系の民族学校については、何らの評価も行わないのか、論理的説明は全くなされていません。これでは、アジア系の民族学校に対して、日本政府は正当な評価を行うことを放棄しているといわざるをえません。一部の報道によると、この決定の背後には、朝鮮民主主義人民共和国に対する世論の硬化への配慮があると言われています。しかし、同国の政治体制に直接責任を負うことのできない生徒に対して、世論への配慮の名の下にこのような措置を執るとすれば、教育行政を管掌する官庁として著しく不適切であるとの誹りは免れ得ないと考えます。

 私たちは、朝鮮史を学ぶ者として、歴史性を無視してアジア系民族学校を差別的に処遇するこの度の方針に強く反対します。そして、文部科学省がこの度の差別的方針を撤回し、改めて、アジア系民族学校を含め、全ての外国人学校卒業を、大学受験資格として認定することを要求します。また同時に、各大学におかれては、このような差別的な方針に左右されることなく、自主的判断を貫かれることを強く希望します。

2003年3月25日

                                               朝鮮史研究会幹事会