第48回大会 パネルの詳細

パネル1 新出資料「デ・ラランデの京城都市構想図」をめぐって

概要

 1910年代前半に朝鮮総督府司法部長官を務めた倉富勇三郎の旧蔵資料の中に、京城の都市計画構想を描いた鳥瞰図が含まれていることが、最近、倉富勇三郎日記研究会の調査で明らかになった。1913年頃、ドイツ人建築家デ・ラランデの手になると思われるこの鳥瞰図には、朝鮮総督府が定めた都市改造(道路改修)計画とは異なる都市計画のプランとともに各種の建築物、特に景福宮内の総督府庁舎建設地などのプランが描かれている。
 鳥瞰図に描かれたプランは実現しなかったが、京城の都市改造を企てる「もう一つの都市計画」が存在したことを示すとともに、総督府庁舎を含む景福宮内の建築物配置プランの形成過程を検討する手がかりを与えてくれるものといえる。
 パネルでは、鳥瞰図を紹介した上で、デ・ラランデによる他の建築物の設計、平壌牡丹台公園の設計も参照しながら、その都市改造構想がどのような意味を持っていたか、そして景福宮内の配置プランがどのようにつくられていったか、などの問題を考えることとする。

発表者

水野直樹(京大・人文研)   全体責任・司会
川嵜陽(仏教大学非常勤講師) 「倉富勇三郎の略歴と所蔵資料・写真について」
徐東帝(京大院生・博士課程)・西垣安比古(京大・人間環境学研究科)「デ・ラランデの京城都市構想」 
宮ア涼子(京大院生・修士課程)「京城都市構想図における景福宮配置プラン」
 

パネル2 解放後・在日済州島出身者の生活史

概要

 済州島は日本に多数の人びとを送り出してきた地域として、広く知られている。解放前のピーク時(一九三四年)には島民人口の約四分の一に相当する五万人余りが日本に在住しており、解放後の一九七〇年代前半には一〇万人以上に達していた。とくに在日朝鮮人最大の集住地域である大阪では、その多くを済州島出身者が占めている(一九三四年二〇%強、一九七四年三六%、二〇一〇年三九%)。そこで済州島出身者の歴史については、植民地期の大阪地域を中心として、これまでもさまざまな観点から検討されてきた。しかしこれに比べると解放後の歴史、とりわけ生活史分野については、近年、徐々に成果が発表されているものの、解明されていない点が数多く残されている。そこで私たちは、ここ十数年にわたって、大阪在住の済州島出身者にインタビュー調査を実施し、最近では関東・東北地方などにも調査範囲を拡大して、彼ら/彼女らの生活史を記録にとどめようと努めてきた。とくに私たちのグループは歴史学・社会学・人類学・経済学・国際関係学など多様な分野の研究者らによって学際的に進められた点に特色がある。  本パネルでは、インタビュー調査で得られたデータをもとに、各自の研究成果の一端を報告する。まず伊地知報告では、在日済州島出身者の移動時期、移動先、移動目的、移動のネットワークなどについて考察する。次に高村報告では、口述史に現れる済州島4・3事件と、日本で調査する意義を考える。最後に鄭報告は、解放前後期、在日済州島出身者にとっての学校教育の意味を証言のなかから読み解く試みである。このようにインタビューを多角的な観点から分析する作業を通じて、済州島民衆の視点から見た東アジア現代史の諸局面を浮かび上がらせていきたい。

発表者(発表タイトルは仮)

伊地知紀子(愛媛大学)「生活史から見る在日済州島出身者の移動経路」
高村竜平(秋田大学)「在日済州島出身者の口述史と4・3事件」
鄭雅英(立命館大学)「在日済州島出身者と学校教育」
藤永壯(大阪産業大学)    コーディネーター

 

パネル3 帝国日本の「学知」と植民地朝鮮――朝鮮総督府の植民地朝鮮研究を中心に

概要

 本パネル報告は、朝鮮総督府が主導した各種の植民地朝鮮研究および政策を検討の対象とし、帝国日本の「学知」が植民地朝鮮を分析・蚕食していくありようを抉り出すことを目的とする。朝鮮総督府が行った諸政策や、その植民地主義的な性格を明らかにした研究は多くあるが、近代的な合理性や客観的な科学という「学知」が帯びる言説そのものはあまり問われてこなかったのも事実である。従って本パネル報告は、主に宗教学、歴史学といった近代の学問や、検閲、通訳官など、そしてこれらと表裏一体をなしている制度の実行が、植民地朝鮮にもたらした認識論的な変化に注目し、単なる植民地主義の問題ではなく、植民地朝鮮における「学知」の成立や展開、定着をも視野に収めようとするものである。
 さらに本パネル報告は、「宗教」「歴史」などの近代「学知」が、いかに「検閲」され、またいかに「翻訳」されていったのかという、植民地支配の深層に迫る問題の提起も目標としている。

発表者(発表タイトルは仮)

桂島宣弘(責任者、司会)
金泰勲「赤松智城と朝鮮の宗教」
「貴得「朝鮮総督府のキリスト教検閲をめぐって」
沈煕燦「末松保和の朝鮮史研究について」
許智香「朝鮮総督府の通訳官たち」

[ 朝鮮史研究会大会パネルの公募について ]  ※募集は終了しました。