第51回大会 パネルの詳細

パネル1 朝鮮戦争からの復興と都市建築―平壌・咸興の事例から

 朝鮮戦争によって北朝鮮の多くの都市は甚大な被害を受けた。そしてその復興には旧東側諸国の強い関与があったことが知られている。しかしその具体的な再建プロセスは、これまでほとんど明らかにされていない。
 都市復興のための建設事業は、いわば北朝鮮という新しい国家の建設事業でもあった。そしてグローバルな国際関係の展開のなかに位置づけるならば、この建設事業は、冷戦の熱戦化にともなって進んだ第二次世界大戦の戦後処理構想の見直し、東側陣営内の秩序再編の一局面ととらえることもできる。
 本パネルでは、谷川竜一が趣旨説明を行った上で、平壌・咸興の概要とそこに建った建築の具体的な姿やデザイン、都市景観を考察し、続いて冨田英夫が旧東ドイツの建築家らによる咸興復興計画の建築・都市的分析を行う。最後に、川喜田敦子がドイツに残る公文書や報告書から、建設の背景となる国際関係にも目配りしつつ、パネル全体として北朝鮮都市・建築史の理解を深めることを目指したい。

報告者・タイトル

谷川竜一(京都大学助教)「平壌復興と創造された景観」
冨田英夫(九州産業大学講師)「咸興復興における東ドイツ建築家K.ピュシェルの活動」
川喜田敦子(中央大学准教授)「北朝鮮復興支援と国際関係」
全体責任・司会 谷川竜一(京都大学助教)

会場 合同講義棟 第四講義室

パネル2 竹島/独島領有権問題の現代史的課題

 二〇一二年八月一〇日韓国の李明博は、大統領として史上初の独島上陸を敢行した。それに加えて各種の歴史問題での葛藤は深刻で、いま日韓関係はかつてないほど悪化している。こうしたもとで、両国の学界における竹島/独島領有権研究は新たな展開をみせている。日本側では、とくに池内敏『竹島問題とは何か』(二〇一二)が、国内で高い評価を受ける一方、韓国では複数の書評が、その見解の中核をなす「無主地先占論」に全面的に反駁している。他方では、自費出版の著作として、竹内猛『竹島/独島問題「固有の領土」論の歴史的検討(前編)』(2010)および『同上(後編)』(二〇一三)が注目される。本書は一般向けの通史的概説書として、すでに二〇一三年、前編が韓国語に翻訳され公刊されている。なお、島根県が設置した「竹島問題研究会」は、第三期の中間報告『竹島問題一〇〇問一〇〇答』(二〇一四)を初めて公刊し、世論喚起に躍起となっている。
 こうした研究の現段階をふまえて。本パネルでは、前記労作の著者である池内敏による解放/敗戦後の研究史を整理した報告、また日韓会談文書の全面公開に取り組んできた吉澤文寿による近年の公開文書をふまえた日韓国交正常化交渉関連の報告を準備する。

報告者、タイトル

池内敏(名古屋大学)「竹島/独島論争史小史」
吉澤文寿(新潟国際情報大学)「日韓国交正常化交渉における竹島/独島論議」
全体責任・コメンテーター 坂本悠一(立命館大学)

会場 合同講義棟 第七講義室

パネル3 植民地朝鮮とスポーツ―1930年代を中心に―

 一九三六年のベルリンオリンピックで孫基禎が金メダルを獲得したことに代表されるように、植民地朝鮮では、日本ほどではないにせよ、スポーツ活動が盛んに行われていた。例えば、日本人学校、朝鮮人学校を問わず、朝鮮の数多くの学校で、柔道や剣道といった武道から野球、テニス、サッカーといった近代スポーツに至るまで様々な運動部が設けられていた。しかし、これまでスポーツが朝鮮史研究の対象として取り上げられることはあまりなかった。
 本パネルでは、戦時体制をはじめ、日本の植民地政策が大きく変動する一九三〇年代に焦点を当て、植民地権力とスポーツの関係性を中心に、コメンテーターやフロアーを交え議論したい。具体的には、李垠錫が学校教育でも導入されたラジオ体操の諸相、小野が戦時下における中等学校の野球部の活動と朝鮮総督府の政策、最後に金誠がオリンピック参加をめぐる朝鮮人のナショナリズムと対日協力の問題について報告する。

報告者、タイトル

李垠錫(同志社大学大学院修士課程)「植民地朝鮮のラジオ体操」
小野容照(京都大学人文科学研究所助教)「戦時下朝鮮の野球界―奨励・統制・消滅―」
金誠(札幌大学准教授)「植民地朝鮮と国際スポーツ―朝鮮人にとってのオリンピック競技大会参加の意義―」
コメント 高嶋航(京都大学文学研究科准教授)
全体責任・司会 小野容照(京都大学人文科学研究所助教)

会場 合同講義棟 第五講義室

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