第54回大会 パネルの詳細

パネル1 「発掘」された文字資料からみた朝鮮古代史研究

 『三国史記』・『三国遺事』および中国・日本の史料をもとに進められてきた朝鮮古代史研究において、地中に埋もれて忘れられた後に、「発掘」された文字資料は、同時代資料として早くから注目されてきた。中でも、発掘調査の進展により類例が急増した木簡については、多くの研究が蓄積されつつある。それ以外にも、碑石・墓誌・文字瓦など、さまざまなモノに書かれた(あるいは刻まれた)文字資料の発見は続いており、それらに対する検討を通して、従来の定説の見直しや、新たな研究の展開が期待されている。本パネルでは、三名の研究者による報告をもとに、「発掘」された文字資料を研究する上での問題点と可能性について、幅広く議論したい。

報告者・タイトル

植田喜兵成智「朝鮮古代史関連の唐代墓誌資料の価値とその性格」
橋本繁「咸安・城山山城木簡の研究と発掘成果」
吉井秀夫「押捺方法からみた文字瓦の変遷とその歴史的意義」

会場 良心館4階 RY406

パネル2 分断体制下の韓国美術における諸問題

 植民地朝鮮において、美術制度はその大部分が日本を通じて導入されたものであったため、解放後の朝鮮画壇においても日帝残滓の清算は例外なく火急の課題であった。植民地期、画壇のシステム内で一定以上の評価を受けるためには、朝鮮人画家たちはもともと朝鮮にはなかった価値観をすすんで導入し、内面化していかねばならなかったが、それだけに清算の過程は葛藤と困難をきわめた。解放直後の時期にもさまざまな試みがなされたが、本パネルでは、分断体制以後の大韓民国に焦点を当て、「韓国美術」の独自性をいかに担保すべきかという画家たちの格闘とともに、分断体制や軍事政権が美術界にどのように影響をあたえたのかについて光をあてる。単に日本だけにとどまらず、朝鮮民主主義人民共和国やアメリカなどとの関係性のなかでみずからを再照射する必要のあった韓国において、美術がいかに多層性を有するにいたったのかを検討したい。

報告者、タイトル

喜多恵美子氏「植民地期から分断体制下までの韓国美術のながれ」
松岡とも子氏「1950‐60年代、韓国現代美術の転換とアメリカ―金煥基(1913‐1974)の渡米前後の活動から」
日比野民蓉氏「モノクローム絵画と「韓国性」の創出」
古川美佳氏「軍事政権下、80年代韓国‘民衆美術’に現れた分断の矛盾と克服―〈白頭の山裾に昇る統一の新たな日よ〉(コルゲ・クリム/李相浩・全情浩共同制作)を例に」

会場 良心館4階 RY407

パネル3 日韓会談研究の現状と課題―日韓新資料の分析から問い直す

 二〇一五年の日本軍「慰安婦」問題についての日韓共同発表がなされた後も、この問題が「最終かつ不可逆的に」解決されたとは言えない。この問題のみならず、強制労働、朝鮮人被爆者、さらには日朝国交正常化交渉の議題となるはずの諸問題がいまだに取り残されている。

これらのいわゆる「歴史問題」を考える土台として、このパネルでは一九六五年の日韓国交正常化に焦点を当てる。二〇〇五年から韓国および日本で一〇万ページ以上の外交文書が公開され、それらを分析した研究成果が多数発表されてきた。しかし、それらを整理しつつ、学術的な分野ではもちろんのこと、今私たちが置かれている植民地責任をめぐる状況を克服するための議論が十分になされてきたとはいえない。

 日韓国交正常化交渉でどのような議論がなされてきたのか。そして、一九六五年の日韓諸条約を土台として、植民地責任をめぐる問題がどのように進んできたのか。このパネルではとくに歴史学としての視点から、国際関係において単純に除去され、消去され、忘却されてしまう問題ではなく、この問題からの教訓を学び取ることを含めて、植民地責任を引き受けることが、それぞれの立場を生かしていくような議論を目指したい。

報告者、タイトル

浅野豊美氏「戦後日米関係の展開の中の日韓関係—経済協力とガリオア債務問題を中心に」
金恩貞氏「在朝日本人財産研究から再考する請求権問題」
長澤裕子氏「1965年「日韓基本条約」後の歴史問題と外交」
討論 吉澤文寿氏、金鉉洙氏

会場 良心館4階 RY408

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